骨が少なくてもインプラントは可能?骨造成治療の種類と方法
- 2026年4月14日
- インプラント

「骨が少ないからインプラントは無理だと言われた」
そんな経験をお持ちの方は、意外と多くいらっしゃいます。
顎の骨が不足していると、インプラントの人工歯根を埋め込む際に骨を突き抜けてしまったり、歯肉から露出してしまったりと、さまざまなトラブルが生じる可能性があります。しかし、「骨が少ない=インプラントができない」とは限りません。骨を増やす「骨造成治療」を行うことで、インプラント治療が可能になるケースが多くあります。
この記事では、骨造成治療の主な種類と特徴、治療の流れ、注意点について詳しく解説します。骨量不足でインプラントをあきらめていた方にも、ぜひ読んでいただきたい内容です。
なぜ顎の骨が少なくなるのか
顎の骨が痩せてしまう原因は、いくつか考えられます。
最も多いのが、歯周病による骨吸収です。歯周病が進行すると、歯を支える顎の骨が少しずつ溶けていきます。自覚症状が出にくいため、気づいたときにはかなり骨が失われているケースも少なくありません。
また、歯を失ったまま放置することも骨が痩せる大きな原因です。歯が抜けると、その部分の骨は噛む力の刺激を受けなくなります。刺激がなくなると骨は徐々に吸収され、時間が経つほど骨の量は減っていきます。
さらに、加齢による骨密度の低下も影響します。年齢とともに骨の再生力は低下するため、特に高齢の方では骨量が不足しやすい傾向があります。
インプラント治療は、顎の骨に人工歯根(インプラント体)を埋め込む治療法です。そのため、骨に十分な厚みと高さがなければ、安定した固定が難しくなります。だからこそ、骨が不足している場合には「骨造成治療」が必要になるのです。

骨造成治療とは何か
骨造成治療とは、不足した顎の骨を増やすための外科的処置のことです。
自分の骨(自家骨)や人工骨(骨補填材)を使って、インプラントを埋め込むのに十分な骨量を確保します。骨造成の方法にはいくつかの種類があり、骨の不足している部位や量によって適切な術式が選ばれます。
骨造成治療を行うことで、これまでインプラントが難しいとされていた方でも、治療の可能性が広がります。
ただし、骨造成は通常のインプラント治療よりも治療期間が長くなること、また外科的な処置が加わるため、身体への負担が増えることも理解しておく必要があります。
骨造成治療の主な種類
GBR法(骨誘導再生法)
最もよく使われる骨造成法のひとつです。
GBR法(Guided Bone Regeneration)は、日本語で「骨誘導再生法」とも呼ばれます。
インプラントを埋め込んだ後、骨が不足している部分に自家骨や骨補填材を置き、「メンブレン」と呼ばれる特殊な膜で覆います。この膜が骨以外の組織が入り込むのを防ぎ、骨が再生するためのスペースを確保します。
GBR法はインプラント埋入と同時に行う場合と、骨造成を先に行ってからインプラントを埋め込む場合があります。増やす骨の量が少ない場合は同時に行えることが多く、治療期間の短縮につながります。術後4〜6カ月ほどで骨が再生され、インプラントが安定します。
メンブレンには吸収性と非吸収性のものがあります。増やす骨の量が少ない場合は吸収性、多い場合は非吸収性が使われます。非吸収性の場合は、骨が再生された後にメンブレンを取り除く手術が必要になります。

サイナスリフト法
上顎の奥歯部分に骨が少ない場合に行われます。
サイナスリフト法は、上顎の骨の厚みが5mm以下の場合に適用される骨造成術です。
上顎の骨の上には「上顎洞(じょうがくどう)」と呼ばれる空洞があります。この空洞と上顎骨の間には「シュナイダー膜」という粘膜があり、この膜を傷つけないよう注意しながら手術を進めます。頬側の歯肉を切開して小さな窓を開け、シュナイダー膜を押し上げてスペースを作り、そこに骨補填材を入れます。
骨造成とインプラント埋入を同時に行う場合もありますが、骨の状態によっては骨造成を先に行い、骨が安定してからインプラントを埋め込む2段階の手術になることもあります。その場合、治療期間はおおむね10カ月〜1年程度かかることがあります。
外科的な侵襲がやや大きい術式ですが、骨が大きく不足している場合でも対応できるのが特徴です。
ソケットリフト法
サイナスリフトより侵襲が少ない術式です。
ソケットリフト法は、上顎の骨の厚みが5mm以上ある場合に適用される骨造成術です。
インプラントを埋め込むために開けた穴(ソケット)から、専用の器具を使ってシュナイダー膜を押し上げ、骨補填材を入れます。切開する範囲が小さいため、傷口が小さく、痛みや腫れが最小限に抑えられる点が大きなメリットです。
ほとんどの場合、骨造成とインプラント埋入を同時に行えるため、治療期間もおおよそ4〜6カ月程度で済みます。ただし、骨の厚みが極端に少ない場合には適用できないことがあります。また、目視できない状態で手術を行うため、術者の技量と経験が重要になります。

ソケットプリザベーション
抜歯後の骨吸収を予防する方法です。
ソケットプリザベーションは、抜歯と同時に行う骨造成法です。歯を失った後、そのまま放置すると骨の吸収が進んでしまいます。抜歯した穴に人工骨を入れ、メンブレンで覆うことで骨の吸収を防ぎ、将来のインプラント治療に備えます。
抜歯後の穴はおよそ4〜9カ月後には固い骨で埋まり、インプラントの埋入が可能な状態になります。将来的にインプラントを検討している方が抜歯をする際に、あらかじめ骨を保存しておく目的で行われます。
遊離骨移植(自家骨移植)
骨が大きく失われている場合の選択肢です。
遊離骨移植は、自分の体の別の部位から骨をブロック状に切り出し、骨量が不足している部分に移植する方法です。自家骨はチタン製のねじで固定し、骨が安定するまで待ちます。
自分の骨を使うため、骨の形成能力や生体との親和性に優れており、安全性が高いとされています。ただし、骨を採取する部位にも手術が必要になるため、身体への負担が大きくなります。また、移植した骨が完全に生着するまでに4〜6カ月程度かかります。

骨造成治療の治療期間と流れ
骨造成治療を含むインプラント治療は、通常のインプラント治療よりも時間がかかります。
術式によって異なりますが、一般的な流れは以下のとおりです。
- 精密検査・診断…レントゲンやCT撮影で骨の量・質を確認し、適切な術式を選択します
- 口腔内環境の整備…歯周病がある場合は先に歯周病治療を行い、インプラントに適した口腔環境を整えます
- 骨造成手術…GBR法・サイナスリフト・ソケットリフトなど、状態に合わせた術式で骨を増やします
- 骨の安定期間…骨が十分に再生・安定するまで待ちます(術式によって4〜12カ月程度)
- インプラント埋入手術…骨が安定したらインプラント体を埋め込みます(骨造成と同時に行う場合もあります)
- 上部構造の装着…インプラントが骨と結合したら、人工歯(上部構造)を装着して完成です
治療全体の期間は、骨造成の術式や骨の状態によって大きく異なります。短いケースで半年程度、長いケースでは1年以上かかることもあります。担当の歯科医師と十分に相談しながら、治療計画を立てることが大切です。
骨造成治療の痛みと術後の注意点
骨造成手術は局所麻酔下で行われるため、手術中の痛みはほとんどありません。
ただし、術後は腫れや痛み、出血が生じることがあります。通常は数日〜1週間程度で落ち着いてきますが、術式の規模が大きいほど術後の症状が強く出る傾向があります。処方された鎮痛剤や抗生物質を指示通りに服用することが大切です。
術後の注意点としては、以下のことが挙げられます。
- 手術当日は激しい運動や飲酒を避ける
- 傷口を舌や指で触らない
- 喫煙は骨の再生を妨げるため、禁煙が推奨される
- 定期的なメンテナンスを欠かさない
特に喫煙は、骨の再生を著しく妨げる要因となります。インプラント治療を成功させるためにも、禁煙への取り組みが重要です。
骨造成治療を受ける前に確認しておきたいこと

骨造成治療を検討する際には、いくつかの点を事前に確認しておくことをおすすめします。
精密検査の重要性
骨造成治療を適切に行うためには、CTスキャンなどによる精密な骨量・骨質の評価が不可欠です。骨の状態を正確に把握することで、最適な術式の選択と安全な手術計画が立てられます。
歯周病の治療を先に行うこと
歯周病がある状態でインプラントや骨造成を行うと、「インプラント周囲炎」などのリスクが高まります。骨造成治療の前に歯周病をしっかりと治療し、口腔内環境を整えることが治療成功の前提条件です。
当院では、歯周病の検査やクリーニングを丁寧に行い、インプラントに適した口腔環境を整えてから治療を進めています。
インフォームドコンセントを大切に
骨造成治療は複数の術式があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。治療を始める前に、担当医から術式の内容・治療期間・リスク・費用について十分な説明を受け、納得したうえで治療を進めることが大切です。
疑問や不安があれば、遠慮なく質問してください。患者さまが安心して治療に臨めるよう、丁寧にご説明することを大切にしています。
まとめ〜骨が少なくてもあきらめないでください
骨が少ないからといって、インプラントをあきらめる必要はありません。
GBR法・サイナスリフト・ソケットリフト・ソケットプリザベーション・遊離骨移植など、さまざまな骨造成治療の選択肢があります。骨の状態や不足している部位・量に応じて、最適な術式を選ぶことで、多くの方がインプラント治療を受けられる可能性があります。
大切なのは、精密検査で現状を正確に把握し、口腔内環境を整えたうえで、信頼できる歯科医師とともに治療計画を立てることです。
長崎市でインプラントや骨造成治療についてお悩みの方は、ぜひいのうえ歯科 道の尾オフィスへご相談ください。患者さまお一人おひとりの状態を丁寧に診査し、最適な治療法をご提案いたします。まずはお気軽にご連絡ください。
著者情報
いのうえ歯科 道の尾オフィス
院長井上 大雅(いのうえ たいが)

経歴
- 長崎大学 歯学部 卒業
- 長崎大学病院 総合歯科診療部 勤務
- 西砂歯科医院(東京) 勤務
- まいおか町歯科(神奈川) 勤務
- ありがとう歯科医院(長崎) 勤務
- 大村ファミリー歯科(長崎) 勤務



